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マラソン大会が徐々に増えだす、スポーツの秋を感じる季節となりました。
まだしばらく残暑が続くようですので、どうぞご自愛くださいませ。

さて、本年10月から、後期高齢者の自己負担割合をめぐる時限的措置が終了し、一定以上の所得を有する人の窓口負担が1割から2割に引き上げられました。対象となるのは、全体のおよそ2割にあたると推定されています。これは制度創設以来の大きな変更であり、医療制度の持続可能性を確保するための重要な一歩と位置付けられています。一方で、生活に直結する負担増となることから、対象世帯への影響は少なくありません。政府は激変緩和の観点から高額療養費制度を併用し、負担の急増を避ける仕組みを残していますが、今回の改正が明らかな節目を迎えたことに変わりはありません。

 

そもそもの問題として、日本の医療費は過去数十年にわたり一貫して増加傾向を示しています。厚生労働省のデータによれば、1990年度には約20兆円であった国民医療費は、2000年度には約30兆円、2010年度には約37兆円、そして直近の2022年度には約45兆円に達しました。GDP比で見ても、1990年代前半には5%台で推移していたものが、現在ではおおむね7%前後にまで拡大しており、経済成長の停滞も相まって財政的な圧力は一層強まっています。特に高齢化に伴い、後期高齢者医療費は右肩上がりで増え続け、制度改正のたびに財源をめぐる論争が繰り返されてきました。

 

しかし、医療費増大の原因を「高齢者の増加」のみに帰するのは不十分です。確かに65歳以上人口は1980年の約1,500万人から2020年には約3,600万人へと倍増し、高齢化率は30%に迫っています。しかし、費用を押し上げているのは単なる人口構造の変化にとどまりません。新規高額薬剤や先進的治療の普及が大きな影響を与えています。たとえば抗VEGF薬は白内障手術料並みの治療費が必要とされますが、状況によっては毎月、しかも際限なくそれが繰り返されます。革新的治療薬は患者予後を劇的に改善する一方で、医療費増大要因として無視できません。加えて、透析医療やがん治療など、慢性的かつ高額な治療が長期にわたり提供されることも医療費全体の構造的増加を招いています。

 

では、この医療費の増大を抑制するにはどうすればいいでしょうか?議論は大きく三つに整理されます。
一つ目は、予防医療・健康寿命延伸による発症抑制であり、生活習慣病対策や健診の充実が重視されています。二つ目は、医療の効率化です。オンライン診療や電子処方箋、地域医療連携の推進によって無駄な受診や重複検査を減らす取り組みです。三つ目は、薬価や高額療養費制度の見直しであり、費用対効果評価をより厳格に導入し、限られた財源を有効に振り分けることが課題とされています。

 

もちろん、これらはいずれも容易ではありません。しかし、社会全体で医療費をどう分かち合い、将来世代に持続可能な制度を引き渡すのかが問われています。本年10月の自己負担割合引き上げは、そのための入り口に過ぎないのです。

 

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医療法人恭青会

理事長 生野 恭司
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