暦の上では春が立ちましたが、変わらずの厳しい寒さが続いております。
本格的な春が近いことを励みに、もうしばらくの寒さを乗り切りましょう。
さて、みなさんは「ロールモデル」という言葉を聞いたことがありませんか?ロールモデルとは、自分の考えや行動の模範となる人物を指します。職場では先輩や上司を指すことが多いですし、歴史上の有名人物であることもあります。
我々世代の多くの医師は野口英世などの偉人の伝記を読んで、感銘を受けた経験があるのではないでしょうか。多くの医師が同じロールモデルを持つことで、同じような価値観を医師同士で共有していたと思います。
ロールモデルは医療現場で特に重要です。医療技術は知識でなく、現場での応用が求められます。経験豊富なロールモデルがいることで、若手は「どのように技術を磨き、どのような手順で実践するのか」を具体的に学ぶことができます。ロールモデルの指導のもとで、教科書では学べない経験や手技、判断力を身につけることができます。その他にも、適切な倫理観やプロフェッショナリズムの習得、モチベーションの向上、チーム医療における協力や連携の学習など、ロールモデルが果たす役割はきりがありません。
ただ、私は昨今の価値観の多様化に伴い、このロールモデルの獲得が困難になってきたと感じています。働き方の多様化により従来の「成功モデル」は当てはまらなくなり、個々の医療従事者が「自分に合うロールモデル」を見つけるのが難しくなってきています。また、価値観が多様化することで、「自分の理想に近い医療従事者像」を特定することも難しくなってきました。例えば、「技術に特化したモデル」と「ワークライフバランスを重視するモデル」は異なり、どちらを参考にするか迷う場面も出てきます。
ただ、前向きに考えることもできます。一人のモデルに捕らわれないということは、例えばチーム内で複数のロールモデルを持つことも可能です。手技に優れた先輩、患者対応が得意な同僚、研究に強い上司など、特定の1人に依存せず、複数のロールモデルから学ぶことができます。
このように、「1人の完璧なロールモデルを探す」時代から、「自分に合った部分的なロールモデルを複数持つ」という時代へと、医療現場におけるロールモデルの概念は変わろうとしているのかもしれません。