師走を迎え、何かと気ぜわしい毎日が続いておりますが、皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。寒さも一段と厳しくなってまいりましたので、どうぞお体にお気をつけてお過ごしください。
さて、先月から医療現場の経営改善についてお話ししてきましたが、今回は医療経営におけるもっとも重要な「人件費」についてお話しさせていただきます。
日本全体では、賃上げの流れが加速しています。2025年春闘では主要企業の平均賃上げ率が 5.25% に達したとされ、従来とは異なる局面に入ったことが示唆されます。
一方、医療機関における賃上げの実績は限定的です。報告によれば、医療従事者の賃上げはここ2年間で約3.4% にとどまっています。
さらに、2025年時点の病院全体の平均賃上げ率は 約2.41% とも示され、他産業との格差はむしろ拡大傾向と見られます。
賃上げが進まない背景には、医療が公定価格で運営されているという制度上の制約があります。物価上昇や材料費・エネルギー費の増加が続く中でも、価格転嫁はできません。その結果、医療機関の収支構造は急速に悪化しつつあり、ある調査では一般病院の約7割、一般診療所の約3割が赤字とされています。
2024年度改定では「ベースアップ評価料」による賃上げ支援が導入されました。しかし、補填効果は病院で総人件費の2.3%、診療所で 1.2%程度との分析があり、人件費の上昇分を補填するには不十分です。そのうえ、要件を満たせず算定を断念した医療機関もあり、制度利用の格差も顕在化しています。
結果として、医療業界の人材確保競争力は低下しています。地方を中心に採用難が強まり、診療の維持に影響が生じている例もあります。また、待遇差の拡大は、医療従事者の都市部への流動をさらに促す要因ともなり得ます。
こうした状況を踏まえ、政府は診療報酬改定を待たずに医療従事者賃上げプラス3%分を半年前倒しで支援する施策を示しました。次期改定では「物価・人件費高騰への対応」が明確に掲げられており、基本報酬の見直しが議論されています。
ただし、医療保険財政には限界があり、抜本的な改善につながるかどうかは予断を許しません。制度の目的である安定的な医療提供体制の維持と、実際に現場で発生している急激なコスト上昇との乖離が拡大している状況は、引き続き注視が必要と言えます。医療の人材確保と経営安定の両立は短期の調整策では解決しにくいテーマです。今後も賃上げの動向、物価・コスト上昇の程度、そして制度設計のあり方を継続的に検証していく必要があります。
さて、メルマガも2025年最後の配信となりました。今年も1年間ご愛読いただき誠にありがとうございました。最後になりましたが、みなさまの2026年がよき年であるように心からお祈りしております。