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春らしく穏やかな気候に心和む季節となりました。
暖かい日もあれば、肌寒い日もある気まぐれな気候ですが、お身体には十分お気をつけください。

 

さて、2024年4月から実施される「医師の働き方改革」。 眼科医のほとんどが属するであろうA水準では、年間960時間、月間では100時間の時間外労働の上限規制があてはめられます。社会奉公的な医師の連続 過重労働を規制し、健全な環境下で医師たちに持続可能な労働環境を提供しようというもので、医師に集中しがちな業務の分担促進が期待されています。医師は余った時間を利用して、勉強やキャリア形成に取り組むことができます。


しかしながら、特に地方や医療を維持するために、他業種にはみられないような「例外」や「特例」が頻発され、場合によっては骨抜きにされる恐れがあるとお話ししました。

前回は「宿日直許可」を取り上げました。病院が申請すれば、あまり労働を行わないような宿直などは業務時間にカウントされないという魔法の呪文のような制度です。この宿日直許可を申請する病院が急増しています。

 

そして、もうひとつ問題となっているのが「自己研鑽」です。医療界では以前から「医師は常に研究や勉強を行うべき」という暗黙のルールがありました。この姿勢は立派なものなのですが、最近になり、本来「業務指示」としてなされるべきものが「自己研鑽」として都合よく使われていることが明るみになってきました。
有名なのが、2022年5 月に甲南医療センターの26歳の医師が過労自殺した事件です。自殺する直前1カ月に200時間を超える時間外労働や100日連続勤務などがあったとされます。

 

ただ、病院側は労働基準局が認定した時間外労働時間の中には、本人が自由意志で行う「自己研鑽」が含まれていると反論しています。法人と院長、他1名は労働基準法違反により書類送検され、ご両親は本年2月に運営法人に対して損害賠償請求  訴訟を起こしています。医学部まで卒業させた将来有望なお子様をこのような形で失ったご両親の無念は想像するに余りありますが、争いはすでに法廷に移りつつあります。

厚労省によると監督者の指揮命令下にあるのは「労働時間」、自由意志によるものは「自己研鑽」と区別していますが、客観的に例示するのは難しく最後はいつもの「個別に判断する」と現場に丸投げです。
自分で論文を書くと「自己研鑽」かもしれませんが、教授にスライド作成を依頼されたら「労働時間」でしょう。


医局会も自由意志で出席するなら「自己研鑽」ですが、出席せよと言われたら「労働時間」になります。医学部に深く関わっていらっしゃる方はご存知でしょうが、研究から医局行事まで、自由意志の体裁をとりながら、実は半強制的な業務は無限に存在します。不参加により制裁や不利益を被るものは実質労働時間とみなされますが、その線引きが非常に難しいのです。

もちろん、医師に自己研鑽が必要なのは大いに同意しますが、労働との兼ね合いになると複雑です。このように「医師の働き方改革」が本当に労働者、雇用者ともによい方向に進むのか、あるいは新たな問題を生み出すだけなのか。私は非常に微妙に思っています。

 

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医療法人恭青会

理事長 生野 恭司
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