以前、黄斑前膜のお話をいたしましたので、今回は黄斑円孔についてお話いたします。
【②黄斑円孔】
黄斑円孔は、60歳~70歳代に多い病気で、老化とともに生じる網膜の病気です。 黄斑は網膜の中で最も大事な部分で、文字を読んだり人の顔を認識したりします。黄斑がやられてしまうと、景色など大雑把なものは見えますが、看板の内容が分からなかったり、文章が読めなくなったり、人の顔が認識できなくなったりします。 黄斑円孔は手術で治る病気ですので早めの受診・治療が大事です。
症状としては、歪みや中心部の見えない部分(暗点といいます)の自覚から始まります。
字が読めない、イラスト等の一直線が歪む場合は黄斑疾患を疑って間違いありません。
また、見えないといっても日常生活全体ではあまり不自由することがなく、特にもう片方の目がよく見えている場合は、そのまま気づかずに放置されることがあります。
診断は眼科に行かないと分かりません。最近は特に光干渉断層型(OCT)という検査機械を用いることで100%診断できるようになりました。黄斑円孔と診断された場合は手術が必要ですが、発見から半年を過ぎて手術をしても視力が上がらないというデータもあります。そのため、いくの眼科では発見から遅くとも1ヵ月、できれば2~3週間以内に手術するようにしています。
治療は硝子体手術を行います。硝子体というゼリー状のものを取り、円孔の周りをきれいにして、最後にガスを入れ終了します。ガスを入れた場合下向きや横向きなどの体の向きの制限が加わります。またガスが入っている間、通常1週間から2週間はあまり見えません。
治療成績としては、円孔が塞がるのは9割から9割5分と言われています。しかし、発見の遅れや穴の大きさ、強度近視であるなどがある場合、成績はかなり下がってきます。また、穴が塞がっても元通りに見えるわけではなく、歪みが残ったり、視力が思い通り回復しないことも往々にしてあります。ですので自覚から手術までの期間がかなり決め手となります。網膜が痛む前に、そして穴が大きくなる前に手術することが何よりも重要なことです。上記のような症状を自覚したらすぐに眼科を受診しましょう。