白内障手術時には、当院では血液検査を行います。比較的高齢の方の場合、特に自覚がなくても心臓や内臓の病気を持っておられる可能性があるため、内科で白内障手術のための検診をしていただき、全身の状態に問題がないことを確認して手術を行っています。かかりつけ医師がいない場合でも、最近の検診結果をお持ちいただければ、こちらで確認することが可能です。
手術を行う際に問題となる、重要な病気についていくつかをお話しします。
1つ目は心臓疾患の有無です。極端な高血圧や頻脈・不整脈などが手術中に出る場合があり、この場合手術前の心臓の状態が非常に重要になります。また、手術前後に心筋梗塞など発作が起こると致命的な場合があります。日常は特に気づかない場合でも、手術の際のストレスが誘因となって症状が出る場合もあるため、60歳以上の方は必ず手術前に心電図検査を受けていただきます。
次に糖尿病の有無です。血糖値が高いと感染症になりやすく、傷口が閉じにくいこともあり、術後の化膿性眼内炎のリスクが高まります。
糖尿病の血糖値は通常ヘモグロビンA1cという値で表されます。一般的にはこの値が8を超えるとリスクが高くなるとされ、このような糖尿病が見つかった場合は内科の先生に依頼して、血糖値をコントロールしていただきます。
また、前立腺などの泌尿器疾患も重要です。前立腺肥大のお薬の中には手術の際中に虹彩脱出や瞳孔の縮小(縮瞳)をきたすものがあります。手術がやりにくくなったり、合併症の可能性が高くなります。治療薬を内服されている方は白内障手術を検討する際に主治医に申し出て下さい。手術中に注意して行う以外、予防法はありませんが、手術前に知っておく必要があります。
最後に、患者さんの中には、血管の病気で血が止まりにくくなるお薬を飲んでいる方がいます。白内障手術の場合、お薬の服用を継続したまま手術をすることがほとんどですが、手術を検討する際には重要な情報となります。
このように、白内障手術時の健康チェックは円滑な手術や合併症を減らすという意味で必要不可欠です。当院では、できるだけ患者さんの負担が少なくなるよう、各医療機関と連携しながら、手術を行っています。