網膜硝子体疾患の診断法は、ここ10年で長足の進歩を遂げました。1990年までは医師による眼底の観察、眼底カメラ撮影、そして重症例には蛍光眼底造影法がありました。眼底カメラの精度はさほど高くはなく、また白内障では、透光性が低下するため分解能が低下し、非常に大雑把な診断法と言えました。また、蛍光眼底造影撮影は網膜血管閉塞性疾患(網膜静脈閉塞性や糖尿病網膜症など)には有効でしたが、網膜の形態異常は検出できません。1990年後半より登場した光干渉断層計(OCT)は網膜の微細な形態異常をとらえることができます。この形態異常には黄斑円孔や黄斑前膜など手術により視力が回復する疾患が含まれます。また最近話題となっている加齢黄斑変性などもこのOCTが診断と活動性評価に必須です。OCTは長波長を利用するため、白内障などの中間透光体混濁にも強く、ある程度の白内障でも細かな診断することが可能です。最近は血管病変の評価も可能なOCTアンギオグラフィーが出てきていますが、これについては次回の疾患コンテンツでお話しします。
このように、診断法が進歩し、今まで発見が不可能であった近視性黄斑疾患などは、OCTにより診断が可能となりました。これら加齢黄斑変性や近視性疾患は適切な時期に治療すれば視力を回復することが可能です。15年前まで治療不可能であった病気も、治るようになってきました。つまり15年前の知識では、全く予測不可能の事態が(特に眼底疾患)起こっているのです。これを我々医師は念頭に入れて治療する必要があります。視力低下や変視(歪みやたわみなと)を訴えた場合、適切なタイミングで一定のクオリティーを満たす眼科に紹介することが非常に重要です。緑内障も含め網膜疾患のほとんどで早期診断・治療が重要です。そのため網膜の診断が的確にできる医療機関を常に連携し、治療に当たることが重要です。最近高齢化により内科的慢性疾病を持つ患者様でも、治療や手術を十分に行えるようになり、QOLの向上を求める方も増えています。この点も我々恭青会が様々な分野との医療連携を積極的に進める理由です。
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