2023年5月13日(土)からの2日間、博多で第5回日本近視学会総会が開かれました。今回は九州大学眼科の園田康平教授が総会長を務められました。コロナ明けということもあり、多くの海外ゲストを迎えて日本からもたくさんの参加がありました。園田先生のお人柄どおり、学術的に優れた学会というだけでなく、色々な面で行き届いた学会でした。
近視の治療と一口にいっても、小児期における近視進行抑制から、青年期以降の合併症の管理まで非常に幅が広いのが特徴です。中でも近視人口の増大が懸念される現代社会では、抑制治療は世界的に注目を浴び、その発展は目覚ましいものがあります。
今回も多くの新規近視抑制治療や研究成果が発表されました。日本の標準的な先端治療としては低濃度アトロピン点眼とオルソケラトロジー装用ですが、その他にもたくさんの治療が開発されつつあります。
中でも注目を浴びたのは「特殊なコンタクトレンズ・眼鏡」と「赤色光療法」の2つです。通常コンタクトや眼鏡は近視を矯正するために使用されますが、多焦点にしたり中心網膜と周辺の焦点距離をずらす構造にすることによって進行抑制が期待されています。
例えば、香港のDIMSレンズが有名です。通常眼鏡と少し見え方が異なるため慣れが必要ですが、近視の進行が遅くなると報告されています。
赤色光療法は波長650nmの赤色光を毎日数分見ることで近視進行を抑制するというものです。個人的な感想ですが、赤色光がかなり眩しいため、途中脱落や健康被害が気になるところではあります。
新規治療の開発でも臨床使用でも日本は明らかに遅れています。今のところ、これらは未承認のため個人輸入でしか対応できていません、つまりは放置ということです。個人輸入は、その管理や安全性の担保など多くの問題をはらんでおり、一刻も早く眼科医による管理のもと実践される物になることを期待します。